6/9/'06
皆 野 民 俗 芸 能 奏 楽 研 修 会
未 来 へ と ど け
こ の リ ズ ム
こ の メ ロ デ ィ

本部講師執筆の他誌掲載コラムより、民俗芸能なお話vol.21〜をピックアップしました!
本部 講師  関根勢津子
 和太鼓が人気だそうである。古くからの民俗文化としての“郷土芸能”を持たない新興住宅地などのコミュニティで“地域芸能”として和太鼓の会をつくったり、地域にとらわれずに愛好家が集まってグループを結成したり。複数の太鼓を組み合わせ、バチを華麗にさばきながら踊るこれらの新しい演奏スタイルは“見せる”要素が濃く、伝統にとらわれない創作太鼓で、「和太鼓」という言葉を生み新しいジャンルとなった。
 上記の新進創作太鼓に対し、古くからの地域の信仰や風習に根ざす民俗芸能では、太鼓は舞や歌の伴奏楽器の一つとして(神楽曲や獅子舞曲、民謡など)、あるいは祭りを盛り上げる音楽として神輿や屋台を元気づけ囃す(祭り囃子)。また大衆的な伝統芸能としては能や歌舞伎、落語などの舞台に付随するものとして使われてきた(歌舞伎囃子、能楽囃子、出囃子など)。また、芸能ではないが神社や寺で神仏に祈りを捧げる時、まるで神仏と交信する装置であるかのように太鼓が打ち続けられることもある。歌舞伎では雪が降る様子や海の波を大太鼓を細かく低く鳴らすドンドンドンドンという音で表すが、祝詞をあげる時の太鼓の音はこれに近い。宮中で守られてきた雅楽は渡来系音楽、中国・朝鮮半島を経て日本にやってきたアジアの古代の儀式的音楽だ。そこで使われるのは日本の太鼓のなかでも最も華やかな装飾が施されている。
 このように一口に太鼓と言っても演奏形態は多様、さらにそれに伴い、太鼓の種類も多様。ドンと太く響くビア樽のような大太鼓、これは木をくりぬいた胴の両面に皮を硬く張り、鋲で打ち止める「鋲打ち太鼓」と言う。同じ大太鼓と書いて「だだいこ」と読むのは雅楽に使われる巨大で装飾華やかなものだ。民俗芸能から歌舞伎や能まで、幅広く使われるスネアドラムのような高い音色の小太鼓は形態的には締め太鼓であり、丸い木枠に皮を張ったものを短い胴の両面に張り、縄などで両側の皮をしっかりと絞める。これを「枠付き締め太鼓」という。そのほか「小鼓」「大鼓」「大拍子」「鞨鼓(カッコ)」。またタンバリンのように片面だけに皮を貼った「片面太鼓」、団扇のような「枠太鼓」などさまざま。奏法としては皮を素手で打つ大鼓や小鼓もあるが、ほとんどはバチを使う。韓国のチャンゴのように片手はバチ、片手は素手で皮を打つ太鼓も古代にはあったらしく、埴輪で出土されているが、日本では早い時代に絶えている。日本書紀や古事記にも登場する太鼓だが、ルーツはやはり大陸。「鋲打ち太鼓」は中国漢民族が広めたと言われる。「枠付き締め太鼓」だが、これは世界的に見ても、インドやスリランカ、中国少数民族、中国福建省、韓国、日本など、特定地域・特定民族に限られている太鼓だという。
 たくさんの太鼓を背にした雷神。これは中国でも道教の神様の一人として存在する。雷様のトレードマークである太鼓は、中国の古い木版画では鋲打ちの桶胴型の太鼓を連ねている。シルクロードの敦煌の石窟でも、連ねた太鼓を背にした雷様の図が多数発見されているそうだ。雷という文字だが、古代中国の青銅器に記された金文字では“雨”の下の“田”が複数あり、それは雷様の太鼓を表していたのだそうだ。残念ながら雷様の連なる太鼓は架空の楽器で、現実には存在しない。
 雷様の太鼓は恐いが、歌舞伎や能の舞台で響く大鼓や小鼓、祭り囃子の太鼓は、一打入魂、緊張感と同時に清々しくもある。何百年と続いて来たこれら古典の太鼓の音には、時空を超えた響きが感じられるのだ。盛んになる一方の新しいジャンルの「和太鼓」を尻目に、後継者不足に悩む民俗芸能の太鼓を守り続けたいと願う私である。 
アジアがブーム?#22
「太 鼓 が い っ ぱ い」by 關根勢津子
(05年10月号)
すべてのテキスト及び画像の無断転載・コピーを禁止いたします。→NEXT

コラム執筆者
研修会本部 講師/ 關根
私が97年から某社社内報のコラムに連載しているアジアのお話です。民俗芸能がらみのお話がここのところ続いたので、このサイトにも掲載してみました。




ホームに戻る
すべてのテキスト及び画像の無断転載・コピーを禁止いたします。


ホームに戻る


皆  野  民  俗  芸  能  奏  楽  研  修  会
Copyright (C)2006
All rights Reserved
すべてのテキスト及び画像の無断転載・コピーを禁止いたします。